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中国の胡錦濤主席が中国のトップとしては 10 年ぶりに国賓として来日いたしました。10 年前、やはり国賓として来訪した江沢民主席は皇居での晩餐会での挨拶で、ずいぶん無遠慮な物言いをしたと記憶していますが、胡主席は極めて丁重で配慮の行き届いた挨拶でありました。
私は決して中国におもねるものではありませんが、今回の日中首脳会談は極めて成果が上がったものであると思っております。私自身、首脳会談に陪席を務めると同時に同行した二人の大臣とバイ会談を行いました。それらを通じて、日本がかねてから主張していた地球温暖化防止対策としての新しい国際的枠組みである、セクター別アプローチの有効性も初めて中国側が評価する事になりましたし、懸案事項であった日中レアアース交流会議も年内に開催する事を確約できました。
また、原子力の平和利用協力を強化することに合意できました。日本が発案している産業別セクター別アプローチとは各産業ごとに一番効率の良い技術を基準点として世界中の産業の CO2 削減ポテンシャルを計り、そのために移転すべき技術を特定できる極めて公平公正で実効性の上がる温暖化対策です。アメリカは最初から評価していましたが、最後まで異を唱えていた EU や途上国代表の南アフリカに続いて中国までが評価したとなると、最後に取り残されたのは自虐的な日本の一部マスコミです。
レアアースは先端技術に欠かせない鉱物資源ですが、その 9 割は中国によって供給されています。価格の一方的引き上げや売り惜しみに際して、協議をするのが日中レアアース交流会議ですが、中国側はここ何年か話し合いを先延ばしにしています。その開催の確約を取り付けたという事は、日本の資源確保及びハイテク技術開発にとって極めて重要な出来事です。
耳目を集める東シナ海ガス田開発でありますが、まさにトップ会談で解決のメドが付いた (首相談) 事は、極めて意義深い出来事です。詳細はこれから詰めなければならない部分が多々ありますが、推測記事が乱発されて双方の不信感を煽らないようにする事が大切です。
中国の政治的・軍事的・経済的膨張は、これからも世界の悩みの種となり続けますが、引っ越すわけにはいかない隣国として厳しい交渉を続けながら、戦略的互恵関係を構築していく事は言わば両国の宿命でもあります。